石渡宏道のひとりごと 代表コラム

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モラトリアム

モラトリアムという聞き慣れない言葉が、新聞やテレビで話題を呼んでいます。モラトリアムとは、金融恐慌や天変地異などの発生により経済活動に深刻な影響をもたらすような場合、その影響の拡大を抑えるために法令によってとられる一時的な債務返済猶予のことです。

今まで日本での数少ない実施例は、戦前の1923年の関東大震災、1927年の昭和恐慌の時ぐらいでしょう。
ご存知のとおり、関東大震災は死者不明者14万人を超える大惨事でした。第一次世界大戦が終結し、戦争特需の好景気に陰りが出ていたころで、日本経済はこの大震災で甚大な打撃を受けたものです。
一方、昭和恐慌は大震災の4年後、震災の影響と世界恐慌の大波にのまれ、株式・商品市場の暴落、輸出の激減、中小企業の倒産が相次ぎ、失業者が続出しました。
現在よりはるかに価値が高かったはずの大学卒業生の3分の1は職がないという厳しい状態でした。

こうした過去のモラトリアムを振り返ってみると、今の日本のこの時期のモラトリアムの実施は、はたして適当なのかと疑問を持ってしまいます。

理由の一つ目は、景気が低迷しているのは事実ですが、このところの日銀の金融政策会議では、景気認識は持ち直しつつあるとの判断を示しているからです。
輸出や生産が増加しており、今年度後半以降、経済が持ち直すと予想しています。民間のパワーに期待します。

二つ目は、政府の企業再編支援機構が業務を開始したことです。
国内経済が収縮している厳しい環境下で、どこまで不振企業を支えることができるかは疑問ですが、政府保証枠1.6兆円の確保は心強い限りです。

三つ目は、モラトリアムの実施はあくまでも債務返済猶予であり免除ではありません。しかも再建可能な企業が対象で、その判断は金融機関そのものが行います。これにより、かえって貸しはがし・貸し渋りが進み、対象企業の選別が非常に厳しくなるものと懸念します。

今まで全企業の99%を占める中小企業は大企業の調整弁、ショックアブソーバーの地位を余儀なくされてきました。
返済猶予という“出口”の解決策ではなく、独立した価値ある中小企業の地位向上の施策、すなわち“入口”の議論で小規模零細企業の厳しい経営環境を乗り切る施策を期待したいものです。

過去のコラム

更新月 タイトル
2010年7月 天使の歌声
2010年6月 リーダーシップの本質
2010年5月 仏師 石渡康運
2010年4月 トヨタの危機
2010年3月 増税議論と為政者の責任
2010年2月 日本航空
2010年1月 新春にあたり
2009年12月 平成維新
2009年11月 モラトリアム
2009年10月 見える化
2009年9月 資産づくりを応援します
2009年8月 音楽の贈り物
2009年7月 朝礼で一日の活力を得る
2009年6月 横浜開港150周年
2009年5月 比叡山延暦寺
2009年4月 資産の運用、管理、保守
2009年3月 監査役の勇気
2009年2月 ヒトが財産
2009年1月 統合の思想
2008年12月 二兆円の定額給付
2008年11月 東アジアの時代
2008年10月 倒産
2008年9月 鶴見の歴史
2008年8月 偽装問題
2008年7月 学会
2008年6月 古都鎌倉
2008年5月 長寿社会の医療問題
2008年4月 熱い夏
2008年3月 地球温暖化問題
2008年2月 課題の解決
2008年1月 組織の品格
2007年12月 司馬温公の教え
2007年11月 自己革新と組織革新
2007年10月 金融商品取引法に際して
2007年9月 残暑お見舞い申し上げます ~2007年夏~
2007年8月 偽装事件から内部統制の必要性をみる
2007年7月 定年退職後 〜マネープランを立てる〜
2007年6月 2回目 定年退職後 〜セカンドライフの充実〜
2007年6月 企業の社会に対してその存在理由 〜CSRの取組み〜
2007年5月 今年の申告から特に気になったこと
2007年4月 横浜の活性化のために
2007年3月 寒中お見舞い申し上げます
2007年2月 昨年の流行語大賞
2007年1月 激動の2006年 そして2007年へ
2006年12月 横浜商工会議所の2号議員に就任しました
2006年11月 新会社法の私的見解
2006年10月 コンビニ業界のスクラップアンドビルドから学ぶ
2006年9月 残暑お見舞い申し上げます